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海外営業・マーケティングコラム

2023-12-06

東南アジア事業における市場選定手法とマーケティング戦略10選

東南アジア市場は、その経済的な活況と多様な文化により、ビジネスの新たなチャンスを提供しています。この地域は、さまざまな言語と経済状況を持ち合わせており、これらの要素を理解することがマーケティング成功の鍵となります。本記事では、東南アジア市場の基本的な特性をまとめ、同市場で効果が期待できるマーケティング戦略を検討します。

東南アジア市場の理解

マクロ経済概観

アジア開発銀行によると、2023年のASEAN(東南アジア諸国連合)の経済成長率は4.6%、2024年は4.8%と見込まれるようです(https://www.adb.org/ja/news/adb-projects-solid-growth-rising-risks-asia-and-pacific)。中でもベトナムとフィリピンの見通しは、2023年がそれぞれ5.8%と5.7%、2024年が6.0%と6.2%とされ、域内でも高い水準になると見込まれています。

またASEAN経済統計基礎資料(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000127169.pdf)によると、ASEANの人口は2021年時点で6億7,333万人と、EU(欧州連合)の4億4,695万人やNAFTA(北米自由貿易協定)の5億40万人より巨大です。

ASEAN全体の名目GDP(2021年)に占める各国の割合については、最も大きいのは35.5%を占めるインドネシアで、タイ、シンガポール、フィリピン、マレーシア、ベトナムと続いています。

貿易面では、輸出、輸入とも域内を対象としたものが2割超を占め最大です、域外貿易は、こちらも輸出、輸入とも中国が最大の相手先となっています。

日本との関係では、対ASEAN貿易(輸出+輸入)は約24.9兆円であり、対世界貿易(約167.9兆円)の14.9%を占めています。

外国直接投資(FDI)

JETRO(https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/07/8eec5ab765f37a9d.html)によると、2022年のASEANのFDI受入額は前年比5.5%増の2,242億200万ドルでした。内訳をみると、構成比で63%を占めるシンガポールは前年比7.7%増の1,411億8,700万ドルで、次いでインドネシアが同4.0%増の219億6,800万ドル、ベトナムが同14.3%増の179億ドル、マレーシアが同40.8%増の170億9,600万ドル、タイが同32.1%減の99億4,000万ドルとなっています。

対ASEANの最大の投資国は構成比16.3%のアメリカで、国別2位が構成比11.9%の日本です。またASEAN全体での対内投資は構成比が12.3%となり日本のそれを上回ります。

業種別ではは金融・保険業が構成比28.1%で最大となり、続いて、製造業(27.5%)、卸売・小売業(14.9%)、運輸・倉庫業(10.0%)となっています。

産業構造と市場の特徴

2018年時点の数字ですが、JETROによるとASEAN各国の産業構造は、ほとんどの国でサービス産業の比率が最も高くなっています(https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/a510527593af3224/20200039.pdf)。シンガポールは金融や物流を中心に同比率が域内最大の77.4%ですが、一方で製造業をGDPの2割に保つ方針を掲げており、製造業の貢献度は21.4%です。また、フィリピンは世界中からのBPO誘致が進んでおり、サービス業の比率は67.7%と高水準です。

製造業の比率は、多くの国で15~20%台の構成比となっています。自動車産業の集積が進んでいるタイでは同比率は27.4%と比較的高水準ですが同比率は低下傾向にあり、これはマレーシアやインドネシアも同様です。他方ベトナムでは同比率が17.8%と周辺国に比べ高くはありませんが拡大傾向にあります。ベトナムでは、将来的には今以上に、製造業が経済の牽引役となる可能性が高いようです。

このような状況ですがASEAN地域全体を俯瞰すると、ASEANは世界のサプライチェーンの要衝として世界各国からの積極的な投資を受けている状況です。加えて米中摩擦の影響から生産拠点移転の受け皿にもなっています。また、デジタル技術を活用した新産業の発展によりリープフロッグ型の成長を遂げていることも同地域の特徴と言えるでしょう。

ターゲット市場の選定手法

ターゲット市場の分析

各国で成長している産業の特定

東南アジアの各国は、それぞれ特定の産業において顕著な成長を示しています。例えば、ベトナムでは製造業が急速に発展しており、特に電子機器の組み立てや加工が主要な産業となっています。一方、インドネシアはデジタルエコノミーの拡大に伴い、eコマースやフィンテック分野での成長が見られます。これらの市場に対して、企業がどのようにアプローチし、どの事業で参入できるかを検討します。

現地市場で成功している企業の分析

実際の市場で成功を収めている企業の分析を通じて、東南アジア市場への進出戦略に関するヒントが得られます。具体的には、シンガポールでITサービスを展開している企業や、フィリピンでBPO業界で成功している企業の取り組み等を参照します。そこから市場選定、製品/サービスの地域適応、人材管理などの要素を分析し、成功の要因を把握します。

ビジネスニーズへのアプローチ

現地市場のダイナミズムの理解

東南アジア市場は、経済成長率の高さ、若年層の人口比率の高さ、デジタル化の急速な進展などにより、非常に動的な環境を持っています。一部の国では、テクノロジーとモバイルの普及が消費者行動の急激な変化を引き起こしています。これらの動的な変化に対応するためには、市場トレンドの定期的な監視と、迅速な戦略の調整が必要です。

ローカルインサイトの重視

現地の市場専門家や業界の意見リーダーとの対話を通じて、深い市場理解を得ることが重要です。これには、ビジネスフォーラムの参加、業界イベントでのネットワーキング、現地企業との直接的な対話が含まれます。これらの活動を通じて、市場の実態や未来のトレンド、現地の消費者の真のニーズを理解することができます。

フレキシブルな戦略の採用

成長を続ける現地市場の変化に対応するためには、柔軟かつ適応性の高い戦略が求められます。例えば、eコマースやデジタルマーケティングの分野での新しい技術の導入、地域ごとの文化的特性に基づいた製品開発などが考えられます。また、その効果を発揮するためには戦略の継続的な見直しと迅速な実行が不可欠です。

クロスカルチャルコミュニケーションの強化

東南アジアは多様な文化を有しているため、異文化間のコミュニケーション能力を高めることが重要です。言語の違い、ビジネス慣行、社会的価値観などを理解し、それに応じたコミュニケーション戦略を立てる必要があります。異文化理解を深めることで、現地の市場とのより良い関係構築と信頼の確立が可能になります。

戦略的市場選定

東南アジア市場への進出に際し、企業は、どの市場が最も適しているかを戦略的に選定する必要があります。このプロセスは、単に市場の大きさを見るだけではなく、市場の潜在的な成長力、競争環境、文化的適応性など複数の要素を総合的に考慮するものです。

市場のポテンシャルの評価

東南アジアには、高い経済成長を遂げている国々が多数存在します。例えば、ベトナムでは製造業の集積が急速に進んでおり、特に注目される市場の一つです。市場のサイズ、成長率、消費者の購買力などを詳細に分析し、その市場が持つ潜在力を評価します。

競争環境の分析

現地市場での競争状況は、新規参入の難易度を示す重要な指標です。例えば、シンガポールでは金融やハイテク産業が発展していますが、これらの分野ではすでに多くの競合が存在します。市場に既存する競合他社の強みや戦略を分析し、どのように差別化できるかを検討します。

文化的適応とリスク管理

東南アジアの各国は、ビジネス上の意思決定プロセスがが大きく異なります。例えば、タイでは人間関係と信頼構築が重視される傾向にある一方、インドネシアではグループ内のコンセンサスを重視する傾向になります。これらの違いを理解し適切に適応することが求められます。また、法的規制や政治的安定性などのリスクも詳細に評価します。

長期的視点と柔軟性

東南アジア市場は急速に変化しており、長期的な視点を持ちつつも、状況の変化に柔軟に対応することが必要です。将来的な市場の成長潜在性を見極め、ビジネスモデルや戦略を継続的に見直し、市場の動向に迅速にできる体制づくりが重要です。

海外でも使えるマーケティング戦略10選

東南アジア市場のB2Bビジネスでは、国内事業と比べてリソースが限られることが少なくないため、効果的なマーケティング戦略は欠かせません。以下に、海外市場向けでよく採用されるマーケティング戦略を10点を紹介します。

1. インダストリーイベントと展示会の活用

展示会や業界イベントは、製品やサービスを紹介し、潜在的なビジネスパートナーとのネットワーキングを行うための重要なプラットフォームです。特に、製造業や技術関連のイベントはB2B市場において有効です。

2. パートナーシップとアライアンスの構築

現地企業や関連する業界団体との強固なパートナーシップを構築することで、ビジネスの信頼性を高め、販路を拡大します。共同プロジェクトや業務提携は、新たなビジネス機会を創出します。

3. デジタルマーケティングとオンラインプレゼンス

ウェブサイトやソーシャルメディアを通じたデジタルマーケティングは、ブランドの可視性を高め、製品情報や企業の専門知識を伝えるために重要です。SEO(検索エンジン最適化)やコンテンツマーケティングは、オンラインでのリーチを拡大します。

4. カスタマイズされたソリューションの提供

特定の顧客や市場のニーズに合わせて、カスタマイズされた製品やサービスを提供します。これにより、顧客にとっての価値を高め、競争優位を確立します。

5. ビジネスインテリジェンスと市場調査

効果的なビジネス戦略を策定するためには、市場のトレンド、競合分析、顧客のニーズを把握するための徹底した市場調査が不可欠です。ビジネスインテリジェンスツールを活用して、データ駆動型の意思決定を行います。

6. 顧客関係管理 (CRM) 戦略

効果的なCRMシステムを導入し、顧客データを集約的に管理します。これにより、顧客のニーズをより正確に把握し、カスタマイズされたコミュニケーションを展開できます。

定期的なフォローアップ、顧客フィードバックの活用により、長期的なビジネス関係を築きます。

7. コンテンツマーケティング

専門知識や業界洞察を提供する高品質なコンテンツを作成し、ブランドの信頼性を高めます。

ウェブサイト、ブログ、ソーシャルメディアなどを通じて、教育的かつ価値のある情報を配信し、潜在的なビジネス顧客にアプローチします。

8. ソーシャルインパクトとブランド価値

社会的責任活動や持続可能なビジネスプラクティスを通じて、ブランドのポジティブなイメージを構築します。

環境保護、地域社会への貢献、教育支援など、社会に良い影響を与える活動を積極的に行い、企業のブランド価値を高めます。

9. アフターサービスとサポート

優れたアフターサービスと顧客サポートを提供することで、顧客満足度を高め、ロイヤリティを強化します。

顧客からのフィードバックを積極的に取り入れ、サービスの質を継続的に向上させます。

10. ローカルイノベーション

現地の市場特性、文化、消費者の嗜好を理解し、それに応じたイノベーティブな製品やサービスを開発します。

地域固有のニーズに対応したカスタマイズされたソリューションを提供し、競争優位を確立します。

まとめ

本稿では、東南アジアの市場特性や、ターゲット選定とマーケティング戦略の手法について考察しました。

市場のポテンシャルと企業のビジネス目標を照らし合わせて参入先を定め、適切なマーケティング戦略を採用することが成功への道に繋がります。東南アジア市場は、変化が激しく、競争が激化している一方で、大きなビジネスチャンスを秘めています。ここでご紹介したターゲット選定やマーケティング戦略が参考となれば幸いです。

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